STORY
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患者さんが安楽であるために
彼女はEICUに務めて5年目になった看護師だった。
新卒で救急病棟・ICUに勤務し、その後、離れたところで働いたが、ある日再びあの場所で働きたいという想いにかられ、EICUに異動希望を出したのだった。
彼女は常に患者さんと家族のことを考えて行動することを心掛けていた。
患者さんが口もとを動かし、何か伝えようとしていた。彼女は口の動きに合わせ「つらい、しんどい」と声にしたところ、患者さんはうなづいた。
彼女はその思いを家族に代弁し、
家族は初めて患者さんの気持ちを知ることができた。
それが家族の意思決定の後押しになり、
患者さんの思いに沿った治療につながった。
その知らせとともに、家族がいっていた言葉を彼女は聞いた。
「あのとき思いを代弁してくれて本当に助かりましたと、
あの看護師さんに伝えてください」
彼女はその時、あの時の関わりは間違いじゃなかったと思うことができた。
患者さんと家族に寄り添い、想いをキャッチし、必要な情報を共有しながら、
最善のケアを提供することが、彼女の使命(たいせつにしていること)と再認識し患者さんと家族に向き合っている。
時には悲しいできごとが待ち受けていることもあるけれども、
彼女は自信をもってスタッフに伝えることができている。
「患者さんと家族が抱える思いを代弁し、支えるケア」をするために何が重要なのかとことん突き詰めることを。
患者さんをよくするためには、スタッフ同士のコミュニケーションが重要になります。なにか意思決定する際には、情報共有が不可欠です。
スタッフ同士でも価値観は異なるため、若いころはぶつかり合うこともありましたが、今では周りの意見を素直に聞けるようになりました。そう思えるようになったのは、お互いに患者さんをよくしていきたいという想いは同じであり、患者さんを含めて、みんなが同じ方向を向いてケアをすることが大切だと気づくことができたからです。
今よりもっとベッドサイドで患者さんに寄り添える看護師になりたいと思っています。
ただ、看護師だけでは限界があるため、多職種を巻き込み周りのスタッフの意見も引き出し、先輩後輩関係なく発信しやすいチームを作りたいとわたしは考えています。
患者さんが安楽であるためには、患者さんとのコミュニケーションが重要だと思っています。
患者さんは、外傷や病態による苦痛、色々なチューブが留置され自由に動けない辛さ、助かるのだろうかという不安、大切な人に会えない辛さや悲しみ、自分の言葉で思いが伝えられないなど多くの苦痛を抱えています。
その苦痛をキャッチできるためのコミュニケーションと、患者さんをよく看ることを大切に看護しています。
そして患者さんが抱える苦痛を、部署のスタッフ・医師、家族、MSWなど多職種で共有し患者さんにとって安楽でHappyなケアを提供していきたいです。
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