当科は99床の一般病床(5つの病棟)とE-ICU、救急病床での診療を担当、急性冠症候群、急性心不全から慢性心不全の終末期患者さんまで幅広く対応しています。メンバーは総勢29名、変わらずの大所帯で、それぞれが各分野のエキスパートであるスタッフが19名、レジデント3名[1名は産休中]、専攻医7名[2名は総合内科に出向中])、非常勤数名で診療しています。総合病院となったことで当科でも内科専攻医を迎えいれることが可能となり、ようやく本年度から5名の3年目内科専攻医が加わりました。また、これまで同様、他院から6ヶ月~1年の研修にいらっしゃっている3名を含め、だいぶ若返りました。当科の使命として、これまで同様、若手医師の育成にも力を入れていきます。
ご依頼いただいた救急患者さんはなるべく受け入れるようにしていますが、総合病院となって以降、単科での判断ではお受けできないという現実があります。病院全体の救急応需率は88%、ご依頼をお断りせざるを得ないことも少なからずあり、ご迷惑をおかけしています。地域から当科に求められているニーズに応えるためにも、可能なタイミングでは積極的に受け入れるようにしておりますのでご理解下さい。
2010年11月1日、兵庫県立姫路循環器病センターの時代から 当科の活動をこちらで公表してきました。
当科は1981年に前身の兵庫県立姫路循環器病センターの一部として設置されて以降、中播磨地区のみならず、兵庫県内の広域において循環器疾患で困っておられる患者さんの治療に従事してきました。救急救命センターを立ち上げ、救急患者の受け入れに力を入れてきましたが、循環器救急で対応する疾患は急性冠症候群、急性心不全などさまざまで、特に当科は本邦での急性冠症候群に対する緊急カテーテル治療の先駆けとなり、豊富な経験をつみ、実績を残してきました。その精神は現在に至るまで受け継がれ、夜間、休日を問わず緊急治療を行えるように24時間体制を整えて、チーム一丸となって救急医療に立ち向かっています。
カテーテル治療を行った後は、外来で適切な薬物加療のアドバイス、生活指導を継続して、再発予防に努めながら、それでも症状の悪化、再発を認めた場合には、心筋シンチグラム検査、運動負荷試験を用いた詳細な虚血評価を行っています。最近になって、虚血を適切に評価することで本当に必要なカテーテル治療だけを行うことで、心臓の予後を改善させることができると言われるようになってきましたが、当科では以前より患者さんの病状にあわせて、これを実践してきました。最近普及してきた心臓リハビリテーションも、当科では早期より導入し、患者さんの心臓ポンプ機能の強化に取り組んできました。
また、当科には不整脈、弁膜症、心不全といった社会の高齢化に伴って増加してきている疾患に対応できる専門グループがあり、最新の知見を用いた高度な治療を行っています。弁膜症であれば、以前は開胸手術でしか治療できなかった患者さんにも、心臓血管外科と十分な話し合いを行った上で、カテーテルを用いた低侵襲治療を受けていただくことができるようになりました。これからもさまざまなデバイス治療が本邦でも行えるようになりますが、当科では積極的に導入していく予定で、高齢化社会における健康寿命の延長を実現できることが期待されます。
そして検査技術の向上は、難病とされてきた疾患についても、早期の診断・治療を可能として、入退院を減らすことで生活の質の向上にもつながってきますが、当科では心臓病に対して、CT検査、MRI検査、PET検査などを用いて、詳細なアプローチを行っています。
姫路循環器病センターでは循環器専門病院として質の高い治療を行ってきましたが、これからは当科の強みを生かしつつ、他科と連携して、さまざまな疾患を同時に抱えて悩まれている患者さんに対しても、包括的な治療を実現させていきます。何かお困りのことがありましたら、まずはご相談ください。
はりま姫路総合医療センターでは2022年10月より新たな専門外来として「息切れ外来」を開設致しました。
「息切れ」はよくある症状ですが、心臓・肺を中心として様々な臓器から起こる症状であり、最初にどの診療科に紹介するか悩まれるのではないかと存じます。当院では循環器内科・呼吸器内科・総合内科・リハビリテーション科が最初から連携して診察を行う「息切れ外来」を開設して門戸を広く対応できる専門外来を開設致しました。多職種で早期から介入することで、正確な診断や的確な治療方針の提案が可能となります。
外来にて原因精査のため診察・問診や各種検査を行います。原因が分かればその疾患に応じた診療科にて専門的な診察を行えるように橋渡しを行います。原因が分からない場合でも、リハビリテーションや呼吸リハ指導などを行って参ります。
慢性的な経過で主に労作時息切れを自覚されている患者さんが対象になります。 リハビリテーションが可能で定期的な当院通院が可能な方を中心に診察を行っております。
※数日単位での急速な症状進行の方は今まで通り、各診療科へご紹介頂ければ幸いです。
毎週金曜午後に専門外来を行っております。原則事前の予約制としており、大変申し訳御座いませんが当日の受診はお断りしております。
循環器内科の領域で、息切れの原因とされる主な病気が「心不全」と「狭心症」です。 「心不全」とは心臓が効率的に血液を送り出せない状態で、体の組織に十分な酸素や栄養を供給できず、息切れなどの症状を引き起こします。血圧や心拍数の変化、心臓の逆流防止弁や心臓の筋肉自体の問題などが原因で発症し、適切な治療と生活改善が必要となる病気です。
また「狭心症」とは心臓という臓器自体に血流を送る冠動脈が狭くなり、心臓の筋肉に必要な血液や酸素の供給が不十分になる状態です。これにより、息切れのほか胸痛や圧迫感、などの症状が現れることがあります。主な原因は冠動脈の動脈硬化であり、運動やストレスなどで症状が悪化することがあります。薬物療法やカテーテル治療、心臓外科手術が行われます。
その他に、肺の血流が悪くなる疾患である肺高血圧症や、運動などで体に負荷がかかっている時だけ症状が目立つ運動誘発性の疾患など、診断が困難なものも存在します。そのような疾患も、当外来では複数の診療科が連携することによって、包括的に的確な評価を行い診断・治療方針の提案を行うことを目的としております。
実施日 | 火曜日 第1週、第3週 |
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担当医師 | 谷口 泰代 (総合内科)、絹谷 洋人 (循環器内科) |
肺高血圧症はさまざまな原因で肺動脈の圧が上昇する疾患です(一部、厚生労働省の指定難病に指定されています)。10数年前はほとんど有効な治療法がありませんでしたが、近年、新しい薬剤や新しい治療法が発見され、「治療ができない病気」から「治療ができる病気」になりました。症状は“息切れ、易疲労感、失神、浮腫”がよくある症状で、専門医療機関での診察が必要です。
肺高血圧症の原因は、循環器疾患、呼吸器疾患、膠原病など、多岐にわたりますので、当科では他の専門科と協力しながら、肺高血圧症の診療ができる体制を整えています。慢性肺血栓塞栓性肺高血圧症などで手術が必要な場合には、神戸大学医学部附属病院をはじめ、他施設と連携することもあります。原因不明の息切れ、浮腫で困りの際には、かかりつけの先生にご相談の上、肺高血圧外来を紹介していただいて下さい。
大阪大学付属病院、国立循環器病研究センターで植込み型補助人工心臓(VAD)を装着していただいた患者さんは、上記施設と連携しながら、当院のVAD外来にも通院していただき、情報共有しています。毎月第1週の金曜日、医師、看護師、臨床工学技士のスタッフで外来をしています。外来では、①患者さんの心不全などの状態確認、②抗凝固薬の調整、③VAD機器の確認 ④ドライブライン刺入部の確認をしています。
心エコー図検査は心臓の動き、心臓弁膜症(弁狭窄や弁逆流)の診断、心不全の状態など循環器診療に欠かせない生理検査の一つです。最近では心臓弁膜症のカテーテル手術時に心エコー図画面を術野に治療することもありますので、今後もいろいろな進化が期待される分野です。心エコー図検査にはいくつか種類がありますのでご説明いたします。
ゼリーを塗った探触子(プローベ)を胸にあてて検査を行います。当院では専門技師により1日70件前後、年間1万件以上の検査が行われており、循環器疾患の発見に役立っています。
口から食道に直径約1㎝程度の細い管(プローブ)を飲み込んでいただきます。検査前にはスムーズな飲み込みができるようにスプレー式のお薬で喉の奥を局所麻酔します。検査中は体の左側が下になるように横向きの姿勢で、口にはプローブを噛まないように専用のマウスピースをくわえていただきます。食道は心臓のすぐ後ろにあるため、心臓や大血管の鮮明な画像が得られます。経胸壁心エコー検査で描出困難な場合や心臓の奥にあるものを観察するのに有用な検査です。
エルゴメーター(検査用自転車)を漕いでいただき運動中の心臓の様子を観察する検査です。この検査で運動中の息切れ症状などの原因が判明することがあります。また、心臓の手術の前後に行い、手術により運動時の指標がどれだけよくなったかを確認することができます。
心疾患患者において、運動能力と生命の長さが密接に関連していることは以前から知られています。CPXは血圧、心電図、呼気ガスを測定しながら、エルゴメーターと言われる自転車を漕いで行う検査です。
呼気ガスより酸素をどのくらい吸っているか、そのとき二酸化炭素をどのくらい吐いているかなどを判定し肺の機能を評価します。これらから心臓、肺、筋肉を含めた予備能力を測定し、心不全の程度を評価し、運動療法を行う際に心臓に負担をかけずに安心して運動を楽しめる運動の強さがわかる検査です。
この検査で測定出来る最大運動能の指標である最大酸素摂取量(Peak VO2 ※1)は生命予後と強い関係がありますし、嫌気性代謝閾値(AT ※2)は、有酸素運動の指標で、それを基にして運動を行うことにより、安全に運動療法を施行することができます。また、ATを基に生活を行うことで、より安全に生活することができます。
約30分です。
これ以上運動ができないという強度における最大酸素摂取量です。このPeakVO2は、一般的に運動耐容能の指標として広く用いられています。PeakVO2は、心不全の予後予測のみならず、生命予後に直結すると考えられています。つまり、最高酸素摂取量が多ければ多いほど、長生きすることとなります。
嫌気性代謝閾値(Anaerobic threshold : AT)といい、呼気ガス分析装置を使用して求める、患者の乳酸が産生される運動閾値のことです。ATレベルを少し下回る強度で心臓リハビリを行うと安全かつ効果が高く、患者の状態に合わせてリハビリが行なえる運動強度としてガイドラインでも推奨されています。→有酸素運動から無酸素運動に変わる境目のポイントで、乳酸が蓄積することなく長時間の運動が出来る運動閾値の事です。
※心臓核医学検査とは心臓に集まる微量の放射線を発生する薬剤(放射性同位元素)を体内に注入して心臓の画像を撮影する検査です。
※心臓核医学検査は大きく分けると①負荷心筋シンチグラフィと➁安静心筋シンチグラフィがあります。
心臓に血液を送る血管(冠動脈)が動脈硬化などによる狭窄や閉塞により心臓の血液の流れが悪くなる疾患(狭心症や心筋梗塞)を調べる検査です。心臓の血液不足(心筋虚血)や心臓の筋肉のダメージ(心筋障害)、心臓の機能を調べることができます。
心筋虚血を診断するには心臓に負荷をかけた時の画像と負荷をかけていないときの画像が必要であるため、2回に分けて撮影を行います。
負荷にも2種類の方法があり①運動負荷法と②薬剤(アデノシン)負荷法に分かれます。
運動負荷は自転車をしっかりこいで行いますので、ご年齢や足腰の痛み、お持ちの疾患によって運動が難しいと判断される場合には薬剤負荷を行っています。
※体重により放射性同位元素はTl(タリウム)もしくはTc(テクネシウム)のどちらかを用いますが検査の精度は同等です。
※Tl、Tcのどちらでも負荷方法も同じですが放射性同位元素によって画像撮影のスケジュールが異なります。
※運動負荷はだんだん重くなる自転車エルゴメーターを約10分程度こぎます。
※薬剤負荷は血管を拡張させるたり心拍数を上昇させる薬剤(アデノシン)を6分間点滴で投与します。検査の効果をあげるために軽く自転車もこぎます。
負荷および安静の2回の撮像結果をもとに心筋血流の画像を作って診断します。心筋血流の欠損がある場合、狭心症や心筋梗塞が疑われるため、追加の検査や治療をおすすめしたり、お薬の治療を強化したりします。
狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患以外の原因で心臓の働きが悪くなる心疾患の検査や診断に使用します。負荷をかけず、疑われる病気によって、それぞれに適した放射性同位元素を注射して撮影を行います。脂肪酸代謝シンチグラフィ(BMIPP)、安静血流シンチグラフィ(安静Tc2回撮影)、心筋交感神経機能シンチグラフィ(MIBG)、ピロリン酸シンチグラフィ(Tc-PYP)などがあり、心臓の働きや心筋の異常などについて調べます。
心臓CT検査では、心電図を取りながら造影剤を注射して、通常の断層撮影をした後に、画像をPCで三次元的に再構成することで、冠動脈や心臓の形態を評価できます。多くの場合は冠動脈に狭窄や閉塞の存在が疑われている患者さんに施行しており、冠動脈の走行や狭窄度、プラークの性状、石灰化の範囲や厚み、閉塞している部分の詳細な評価などに使用しています。
以前は、冠動脈の異常は侵襲的な心臓カテーテル検査でしか評価ができませんでしたが、この検査であれば低侵襲に検査できます。また、上記のようなPCI(カテーテルを用いた冠動脈の治療)を行う前の術前評価や心臓手術(バイパス手術)の術後評価、経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI)の術前評価、心房細動のアブレーションの術前評価にも使用しています。心臓の形態評価、冠動脈奇形(瘤や瘻)の形状の確認といった、先天性心疾患がある患者さんについても有用です。
しかし、造影剤に対するアレルギーがある方や、腎臓の機能が低下している方については、検査ができない場合や、回避した方がよいことがあります。さらに、冠動脈の石灰化が大変強い患者さん(ご高齢の方で多い)では評価が難しくなりますし、不整脈がある患者さんでは画像がぶれてしまって正確な検査ができないことがあります。また、全く症状がない患者さんや冠動脈疾患の可能性が低いことが想定される患者さんのスクリーニングの検査としては、上記のような不利益をもたらす場合があるので当院では行っていません。
検査の前には、患者さんの脈拍数に応じて脈拍を抑える内服薬や注射薬を使用し、画像のぶれをできるだけ回避するように努めています。
兵庫県立姫路循環器病センターでの流れをそのまま引き継いで、はり姫での心臓MRIの検査件数は、月平均で、おおよそ60件(心筋症 28件、冠動脈疾患 1件、心房細動/左房および肺静脈 31件)となっています〔全国の総数は月3,666件〕。
対象となる疾患は、急性心筋障害を来す急性心筋梗塞や急性心筋炎から、慢性心不全の原因疾患鑑別のための心筋評価、先天性心疾患など、多岐に渡ります。冠動脈を非造影で撮像、評価できることから、冠動脈MRAのみならず、冠動脈プラーク像を評価して、CTと合わせ、カテーテル治療の術前に情報を得ておくことで、手技に生かしています。
さらにパラメトリカルマッピングを駆使することで、心筋組織の情報が非侵襲的に得られることも大きな特徴です。心筋組織の浮腫、間質の線維化など、単なる遅延造影ではわからない定量評価が可能で、治療効果判定や予後評価の指標に用いています。
心臓は血液を全身に送り出すポンプですが、心臓自身も冠動脈という心臓の表面を『冠』のように覆う血管で栄養されています。加齢などにともなって動脈硬化が進むと、冠動脈の内側にコレステロールなどが付着して粥腫が形成され、血管の中が狭くなってきます。これによって心筋への血液の流れが低下する疾患を、虚血性心疾患といいます。虚血性心疾患には、『狭心症』と『心筋梗塞』があります。
冠動脈が狭くなると、運動したときなど、心筋への血流の需要が増加したときに血液の供給が不足することで、胸の痛みや圧迫感が出現します。この状態が『狭心症』です。また、粥腫の一部が破れ、粥腫の中身が血液と接触することで血栓が形成され、完全に冠動脈が血栓で閉塞してしまった状態が『心筋梗塞』です。心筋梗塞になると心筋が障害されて壊死するため、命にかかわる深刻な状態になります。
一般的に、治療方針は循環器内科で行っているカテーテルカンファレンスや、循環器内科と心臓血管外科で定期的に行っている合同カンファレンス(ハートチームカンファレンス)で決定します。
当院では年間600例超のPCIを行っており、近畿圏ではトップレベルです。前身である兵庫県立姫路循環器病センターでの41年で行った治療件数は、20,000件を超えていました。日本でまだ急性心筋梗塞に対するPCIが一般的でなかった時代から、姫路市を中心とした近隣の消防・救急隊と連携を行い積極的に救急症例に対応を行ってきました。
また、当院で行っているPCIの半分弱が不安定狭心症や心筋梗塞などの緊急症例に対してで、この割合も非常に高いです。緊急症例の比率が高いことは、夜間・休日も含め、24時間体制でカテーテル室をすぐに使用できるようにスタッフが配備されている病院、適切な症例に対してPCIを行っている病院の目安とされています。
当院の開院以降は夜間・休日も2名の当科医師が日当直しており、今まで以上に緊急症例への対応に力をいれています。
また、最重症の緊急症例である院外心肺停止に対しては、救急科医師とともに治療にあたっています。救急救命センターには、地域初となるCTとカテーテル、手術台機能を有するハイブリッドERを備えており、救急受け入れから、経皮的補助循環装置を用いた心肺蘇生、PCIによる血行再建、全身評価のCT検査をシームレスに行っています。
下肢閉塞性動脈硬化症は、足の血管の動脈硬化が進み、血管が細くなる(狭窄)、または、詰まる(閉塞)病気です。狭窄や閉塞により、血液の流れが悪くなることで、歩行時の足のだるさ・しびれを感じるようになり、進行すると安静時にも症状が現れます。さらに悪化した場合、傷ができても治りにくくなる(創傷治癒の遅延)場合があり、重症下肢虚血という病名になります。危険因子は、喫煙、糖尿病、高血圧、脂質異常症です。
1が軽症で、4がもっとも重症です。
ABI | 手足の血圧を同時に計ってその比を計算することで、足の血流を評価します。 |
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下肢エコー | 低侵襲で足の血管を評価できます。ただし、病変の部位によっては、評価が難しいこともあります。 |
CT | 造影剤を用いて、血管の状態を評価します。造影剤を使用するため、腎臓の悪い方には注意が必要です。 |
MRI | 造影剤を用いずに、低侵襲で血管の状態を評価します。正確さがCTに劣ります。 |
下記の治療がありますが、患者さんの病状によって最適な方法が異なり、これらを組み合わせて対応しています。適切な治療時期を逃すと足の状態が悪くなり、足の切断等、生活に大きな影響を与える可能性もありますので、早期に専門医の診察を受けることをお勧めします。
カテーテル治療 | バイパス術 | |
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入院期間 | 短い | 長い |
侵襲度 | 低い | 高い |
麻酔 | 局所麻酔 | 局所麻酔または全身麻酔 |
治療効果 | 繰り返し治療が必要な場合も | カテーテルと同等または長持ち |
合併症 | 出血、再狭窄、腎機能低下 | 出血、バイパス閉塞 |
血管に針をさし、カテーテルという管を血管内に挿入します。ガイドワイヤーという細い針金を病変部に通過させ、それに沿わせて、バルーンを持ち込んで、狭い病変を拡張します。再狭窄を予防するためにステントを留置したり、薬剤を表面に塗布したバルーンで血管に薬剤を塗布したりします。ステントを留置した際には、再度バルーンで拡張して、形を整えて治療を終了します。血管に通したカテーテル分の傷しか残らないため、低侵襲です。
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通常型のステントのほかに、免疫抑制剤を塗布したステント、人工内皮で覆われたステントグラフトなど、病変の部位や性状等にあわせ、適切なステントを使用して、再狭窄を予防します。
風船の表面に免疫抑制剤が塗布されており、血管の内側に塗ることで再狭窄を低減します。
当科では、カテーテル治療にあたり、最新の知見を取り入れて、他職種と連携しながら、個々の患者さんに適した治療を選択しています。
突然脈拍が速くなる不整脈で、症状としては突然の動悸、息切れ、めまい、胸部不快感などがあります。不整脈によっては失神・心停止をきたすこともあります。
カテーテルを足の付け根などから挿入し、心臓の内側から直接的に心臓の電気信号の流れを記録することで不整脈の起源や回路を解明し、カテーテルから高周波を与え不整脈の起源や回路を焼灼することで不整脈の原因を取り除き、不整脈の根治を目指す方法です。病状にあわせて局所麻酔あるいは全身麻酔で行います。
写真提供 バイオセンスウェブスター(株)・アボットジャパン(株)
心房は洞結節からの電気信号を受けて1分間に50-80回/分興奮していますが、心房細動は心房が1分間に300~500回/分の不規則な電気信号が発生し、心房が痙攣している不整脈です。脈拍が120-180程度まで上昇し脈拍が不整となるため、動悸・息切れ・胸痛・全身倦怠感・めまいの症状を伴います。
肺静脈周囲を円周上に焼灼することで肺静脈と左心房を電気的に離断することにより、肺静脈の期外収縮から発生していた心房細動を起こらないようにする治療法です。当院では左心房・肺静脈の形状に合わせてクライオバルーンシステムを用いた冷凍アブレーション治療も行っております。
写真提供 日本メドトロニック(株)
右心房が1分間に250回程度興奮する頻拍で、心房細動との合併も多く、心房細動から心房粗動にいたると動悸が増悪することがあります。この頻拍は通常、右心房内を反時計回りに興奮旋回しています。治療方法としては薬物治療抵抗性であることが多いため、カテーテルアブレーション治療が薦められ、右心室から下大静脈にかけて焼灼することで興奮回路を離断します。
心房内に異常な興奮を示す部位が存在、あるいは心房内で以上興奮が旋回することで頻脈となります。カテーテルアブレーションにて異常興奮部位あるいは旋回回路を焼灼することで根治を目指す治療があります。
心房から心室への電気信号を伝える房室結節の他に余分な伝導路(ケント束)が存在する、あるいは房室結節へと繋がる伝導路が2本存在しているために、それらの2本の伝導路を介して心臓の電気興奮が旋回するため、心臓が休みなく興奮する不整脈。多くの場合、脈拍が突然に150以上に上昇し動悸や胸痛の原因となる。治療法としては薬物により発作の抑制を試みる薬物治療と、カテーテルアブレーションにて余分な伝導路(ケント束や遅伝導路)を焼灼することで根治を目指す治療法があります。
基礎心疾患がなく心室内に異常な興奮を示す部位が存在し、その異常興奮により脈不整となり、動悸を引き起こすことがあります。経過観察でも問題ないことが多いですが、自覚症状を伴うものや1日の総数が多いもの、持続して心室頻拍となるものは治療対象となります。
治療法としては薬物により発作の抑制を試みる薬物治療と、カテーテルアブレーションにて異常興奮部位を焼灼することで根治を目指す治療法があります。右室起源のものが多いですが、左室起源のものも存在し、左室起源には心外膜側に存在するものがあり、カテーテル治療抵抗性であることがあります。
心室は血液を送り出すという心臓のポンプとしての重要な働きをしています。基礎心疾患がないものと基礎心疾患として心筋梗塞や心筋症を伴うものがあります。基礎心疾患を伴う場合は心筋が障害された部位に異常な興奮回路が形成され、頻拍が起こります。基礎心疾患を伴う場合は頻拍時には血圧低下を伴うことが多く、失神や心臓突然死の原因となります。
治療法としては薬物により発作の抑制を試みる薬物治療と、カテーテルアブレーションにて異常な興奮回路を焼灼することで根治を目指す治療法があります。また、基礎心疾患を伴う場合は基礎心疾患の進行を含めて再発の可能性があり、植込み型除細動器(ICD)による治療も併用します。
徐脈性不整脈とは、通常1分間の脈拍が60回未満になる不整脈です。徐脈性不整脈には、洞不全症候群、房室ブロック、徐脈性心房細動があります。正常な成人では、心臓が収縮と拡張を1分間におよそ60~80回程度繰り返すことにより、血液が全身に送り出されます。しかし、徐脈性不整脈によって、全身に必要な血液が不足して心不全をきたす、あるいは一時的に脳への血液が不足することが原因で、息切れ、めまい、ふらつき、失神などの症状が出現します。
徐脈性不整脈に対して一時的に薬物治療を行う事がありますが、十分な効果が得られにくい事が知られています。そのため、ペースメーカ治療が第一選択となります。
ペースメーカは本体部分とリード部分から構成されており、本体を鎖骨の下の皮膚の下にポケットを作って入れ、リードは血管を通って心臓の中に入れます。ペースメーカから弱い電気刺激を心臓に送り、脈拍を維持することで、徐脈による症状を軽減、消失させます。
従来、症状のある徐脈性不整脈の治療として、経静脈的に右心房、右心室へリードを挿入し、前胸部皮下に本体を植込むペースメーカ治療が基本でした。近年、小型のペースメーカ本体を直接右心室へ留置するリードレスペースメーカが使用可能となりました。
利点として、リード断線等、リードに関連した合併症や、本体挿入部のトラブルが無いこと、植込み後の上腕の運動制限がないこと等が挙げられます。現在のところ、右心室のみを刺激する機種のみ使用可能であるため、適応となる患者さんは限られています。
致死性不整脈とは、突然高度の頻脈で心臓が痙攣したような状態になり、血液を循環させる機能を十分に果たせなくなり、突然死につながる不整脈です。致死性の不整脈には、心室細動と心室頻拍があります。原因は、先天的なもの、生活習慣によるもの、心臓の病気、全身の病気などさまざまです。
心室細動は心臓突然死の最も多い原因であり、突然心臓が一定のリズムで拍動できなくなり、心室の筋肉が勝手ばらばらに興奮を始める致死性不整脈です。一度心室細動になると、心臓のポンプ機能は停止し、血液の流れが止まります。3~5秒でめまいが起こり、5~15秒で意識を失い、3~5分続くと脳死の状態になるといわれています。電解質異常などの明らかな誘因を認めない場合は再発の可能性があり、植込み型除細動器(ICD)による治療が必要です。
心室頻拍は、突然心臓が1分間に100~250回と異常に速く興奮する頻脈性不整脈です。この発作が起こると心臓がポンプの役目を充分に果たせなくなり、脳に送られる血液が減り、めまいや失神を起こしたり、心不全の引き金となったりする危険な不整脈です。心室頻拍に続いて、心室細動が起こり、突然死に至る場合もあります。治療法として、薬物による薬物治療、心室頻拍の原因となっている異常な興奮回路を焼灼するカテーテルアブレーション治療、植込み型除細動器(ICD)治療があります。
植込み型除細動器(Implantable cardioverter defibrillator: ICD)は、致死性不整脈(心室頻拍、心室細動)による突然死を防ぐ最も確実性の高い治療法です。ICDは本体部分とリード部分から構成されており、本体を鎖骨の下の皮膚の下にポケットを作って入れ、リードは血管を通って心臓の中に入れます。
突然起こる心室細動や心室頻拍を自動的に検知し、治療が必要と判断された場合に速やかに抗頻脈ペーシング治療や電気ショック治療を行い、心臓の動きを正常に戻し、致死性不整脈による突然死を防ぎます。
従来の植込み型除細動器(ICD)は、除細動のためのリードを経静脈的に血管を通って、心室内に留置する必要性がありました(経静脈ICDと呼ばれています)。左側胸部の皮下に植え込まれた本体と、前胸部の皮下に留置されたリードから電気ショックを行う皮下植え込み型除細動器(Subcutaneous ICD: S-ICD)が開発され、2016年から日本で使用可能となりました。利点として、心臓や血管に触れないため、植込みによる合併症の発生率が経静脈ICDシステムよりも少ないです。経静脈ICDとS-ICDのどちらが望ましいかは、病気の状態によって異なります。
着用型自動除細動器 (Wearable Cardioverter Defibrillator: WCD)は、着るタイプの除細動器で、致死性不整脈(心室頻拍、心室細動)による突然死を防ぐ医療機器です。致死性不整脈による突然死のリスクが高いが植え込み型除細動器(ICD)の適応が未確定の場合、またはICDの適応だが直ちにはICDが植え込めない状態の場合に、WCDが考慮されます。
心電図電極と除細動パッドを有する着用型ベストと、有線で接続されたコントローラで構成されており、致死性不整脈を検出すると自動的に除細動を行います。心電図にノイズが入り込んで致死性不整脈と勘違いして作動する可能性があるため、患者様本人が治療を中断できるレスポンスボタンがあります。日本では長期間の使用は認められておらず、最大で3ヶ月間となっています。
心臓の血管の病気(心筋梗塞)や心臓の筋肉の病気(心筋症)等により心臓の機能が低下すると、労作時の息切れ・全身倦怠感・下肢の浮腫み等の症状が出現する心不全となります。そして、心臓の機能の低下が進行すると徐々に心拡大をきたし、心臓の動きにバラつきが生じてくることがあります(心室非同期)。心機能低下した心不全の治療は主に薬によって行いますが、かなり進行した場合は治療に難渋することがあります。
心機能が低下しバラバラに動くようになった心臓を、右心室と冠静脈(左心室)のリードで挟み込むように刺激することにより心臓の動くタイミングを揃えてあげる治療を心臓再同期療法(Cardiac resynchronization therapy: CRT)といいます。
薬物治療のみでは治療に難渋していて、CRT植込みの基準を満たした心不全に心臓再同期療法を行うと、60-70%程度の確率で心機能の改善と心不全症状の軽減が期待できます。
ペースメーカや植込み型除細動器(ICD)(=以下、デバイスと総称します)などの植え込み後の重大な合併症のひとつに細菌などの感染症があります。植込み部位の感染のほか、他臓器の細菌感染から菌血症を来たし、デバイスリードに感染が波及することがあります。このようなデバイス感染は難治性であり、細菌感染の一般的な治療である抗生剤の投与のみでは、再発することがほとんどです。さらには重症化して敗血症から死に至る可能性が高くなることも報告されています。デバイスに関連した感染症では、本体のみならずリードも含めたすべての異物を抜去する必要があります。
しかしながら、植込み後、長期間が経過したリードは静脈や心臓の筋肉と強固に癒着し、抜くことは容易ではありません。従来は、このような癒着が想定される場合には、全システムの抜去の為に開心手術を行う必要がありましたが、レーザーシースをはじめとしたリード抜去用の医療機器の開発により、開心術を避けてリード抜去術を行う事が主流となっています。リード抜去術は専門的な技術を要し、施行可能な施設が限られており、当院は兵庫県西部医療圏を担っている唯一の病院です。
デバイス植込み後、本体、リード刺入部に重篤な痛みを生じたり、リードを挿入した静脈の閉塞、狭窄を生じた場合や、リードが重篤な不整脈の原因となったりデバイスの作動の妨げとなる場合などには、リード抜去術が考慮されます。
一時的に脳に血液不足が生じる事が原因で意識が失われる事を失神といいます。失神は突然発症して、短時間で徐々に意識が回復する事が特徴です。てんかん発作などのほかの意識障害と見分けることが大切です。
潜因性脳梗塞とは原因不明の脳梗塞を意味します。潜因性脳梗塞の原因として最も多いのは、不整脈のひとつである発作性心房細動であると言われています。発作性心房細動は、抗凝固薬の内服によって脳梗塞をはじめとした心原性塞栓症を予防する事が期待される疾患です。
植込み型心電図記録計(Implantable Loop Recorder: ILR)は、皮下に植え込み、心電図を常時連続して記録する事により、原因不明の失神あるいは潜因性脳梗塞の原因の特定を目指します。数年以内に電池が消費されて継続的な使用が困難となります。その時点でILRを体外に取り除く手術の実施と、取り除く手術を行った後に再度移植手術を行うか否かについて相談させて頂きます。
写真提供: Medtronic社、Abbott社、Biotronik社
兵庫県立姫路循環器病センターでは早期から上記の新規治療を導入してきました。高齢化社会に伴って増加してきた大動脈弁狭窄症に対するTAVIは通算で400例を超えました。
また施行施設が限定されている僧帽弁閉鎖不全症に対するMitraClipについても、すでに100例に達しています。さらに最近、卵円孔開存症に対する卵円孔閉鎖術や心房細動症例の 脳梗塞予防のためのWATCHMANも開始しました。
大動脈弁狭窄症とは、⼼臓弁膜症のひとつで、石灰化により心臓と大動脈を隔てる弁が開きにくくなることで全身に血液を送り出しにくくなり、血液がうっ滞してしまう病気です。その症状は、加齢に伴うものと誤解されることが多く、未治療のまま病状が進行して、重症になって初めて気づかれる患者さんが多いです。重症になると胸の痛みや失神、息切れ(心不全)などの症状が現れ、予後不良の病気です。
一般的な生命予後は、狭心症が現れると5年、失神が現れると3年、そして心不全の場合は2年といわれており、突然死の危険性も伴います。大動脈弁狭窄症は進行性の病気で、徐々に悪化します。たとえ症状がなかったとしても、重症になった時点で治療介入を行った方が、生命予後が改善するという報告もあります。
保存的治療、外科的治療、カテーテルを用いた治療(TAVI)の3つがあります。
当院では、日本循環器病学会の弁膜症治療ガイドラインを参考にして、年齢のおおまかな目安として、75歳未満の患者さんでは外科的治療を(心臓血管外科が担当)、80歳以上の患者さんに対してはTAVIを第一選択としています。最終的には個々の患者さんにおいて、それぞれの治療法のリスクや患者さんの希望に応じて,ハートチームカンファレンスでディスカッションした上で、治療法を決定しています。以下にそれぞれの治療法について記します。
薬で症状を緩和し,心臓にかかる負担を取り除きます。ただし,⼤動脈弁狭窄症は自然治癒する病気ではありません。保存的治療は弁そのものを治すわけではありませんので,病状は徐々に進行します。
人工心肺装置を用いて,心臓を止めた上で、胸を開いて外科的に弁を置換します。TAVIと比べて侵襲度が高いことから入院期間は長くなりますが、長年の治療経験から長期成績が確立された治療法です。若年で、手術のリスクが低い患者さんが対象となります。
「TAVI(タビ)」とはTranscatheter Aortic Valve Implantationの略で,経カテーテル的大動脈弁植え込み術のことです。胸を開くことなく,また心臓を止めることなく,カテーテルを用いて、患者さんの心臓に人工弁を留置する方法です。人工心肺を使用しなくてすむことから,患者さんの体への負担が少なく,入院期間が短いことが特徴です。高齢で体力が低下している患者さんや開胸での手術に対してリスクを有する患者さんでも実施可能な治療法です。そのような患者さんにおいては、外科的手術よりもTAVIの方が生命予後を改善させるという報告があります。
当初は外科的治療が不可能な患者さん、もしくは外科的手術のリスクが高い患者さんがTAVIの対象でしたが、最近になり手術リスクが低い患者さんにおいても、外科的手術に比べて成績が劣らないことが報告されるようになってきました。わが国では2013年にTAVIが保険適用となり、30日死亡率は2%以下と、海外と比べても良好な成績を挙げています。当院では、2022年10月の時点で、470件のTAVIを実施、豊富な実績を有しています。
― 2018年4月に保険適応になった、重度の僧帽弁閉鎖不全症で、外科手術困難な患者さんに対するカテーテルを用いた新しい低侵襲治療です ―
全身を循環してきた血液は、肺を通り心臓の左心房から左心室へと移動し、全身へ送り出されます。僧帽弁は左心房と左心室の間にあり、血液の流れを一方向に保つ扉のような役割をしています。僧帽弁閉鎖不全症とは2つの葉(弁尖)が合わさることで扉の役割をしている僧帽弁が完全に閉鎖できないため、一度左心室へ入った血液が左心房内へ逆流してしまう病気です。
僧帽弁閉鎖不全症は大きく分けて器質性MR(1次性)と機能性MR(2次性)に分かれます。
僧帽弁の弁尖(前尖・後尖)、腱索に異常をきたすことで僧帽弁の閉まりが悪くなり逆流します。
僧帽弁自体には異常を認めませんが、僧帽弁の腱索がつながっている左心室の拡大や僧帽弁の周り(弁輪)が拡大することで、僧帽弁の閉まりが悪くなり逆流します。
MRの症状は主に呼吸が苦しくなることです。軽症の場合は症状を感じることはありませんが、重症に近づくと運動時などに呼吸苦を感じるようになります。放置し重症となると、日常生活の軽労作(入浴や掃除、洗濯)でも呼吸苦が出現します。症状を認めるときにはMRが重症になっている可能性があり注意が必要です。
MRの診断は聴診で心雑音の指摘から始まります。確定診断は心エコー図検査を用いますが、まずは聴診で心雑音の有無を確認し、心雑音を認める際は心エコー図検査で心雑音の原因を調べます。心エコー図検査では逆流する血流に色を付けることで逆流を可視化し、逆流の有無や重症度に評価用います。心エコー図検査は安静で横になった状態で検査を行いますが、実際に呼吸苦を感じる状況を再現するために、エアロバイクで運動をしている状態での心エコー図検査を診断に用いることがあります。
当院では臥位エルゴメーターを使用して弁膜症や息切れの精査をしております。
手技にかかる時間は平均2~3時間くらいです。
1.初診外来
かかりつけのクリニック・病院から当院へご紹介頂き受診下さい。水曜日、木曜日に弁膜症の専門医による外来がありますがその他の曜日でも受診可能です。心雑音のみのご相談でも遠慮なくご相談下さい。
2.術前検査
経食道心エコー図検査で僧帽弁閉鎖不全症の病態をより詳しく把握します。経食道心エコー図検査は食道から心臓を観察するエコーの検査です。胃カメラと同様にカメラを口から挿入して観察します。心エコーの専門医が15分程度で鎮静薬を用いて苦痛のないように実施します。
3.術前精査入院
経食道心エコー図検査で僧帽弁閉鎖不全症の病態が把握でき治療可能と判断した場合、術前精査入院をして全身の精査を行い併存疾患などの有無を確認します。この際に診断した併存疾患は他の診療科と連携をとり、並行して治療を行うことになります。
4.ハートチームカンファレンス
術前精査の結果元に循環器内科、心臓血管外科、麻酔科が各専門領域の知見を総動員し、患者さん一人一人の最善の治療方法を検討します。
5.入院
入院から治療までの期間は心臓リハビリテーションを実施し、入院期間に低下しやすい心肺機能の低下を予防します。
6.治療
1例目であれば午前9時30分にハイブリッド手術室に入室し、全身麻酔下に経皮的僧帽弁接合不全修復術(MitraClip)行います。2例目の開始時間は1例目が終了した時間により決定しますが概ね12時前後での開始となります。
7.退院
心臓リハビリテーションとお薬の調整を行い個人差はありますが概ね術後1週間後に退院となります。退院後は当院外来とかかりつけの先生の外来を受診頂きます。
ご質問やご相談は、かかりつけの先生と相談の上、兵庫県立はりま姫路総合医療センター循環器内科までご連絡ください。
卵円孔は生まれつき存在する心臓内の小さな穴で、4人に1人が開存していると言われています[右図: 卵円孔開存症(PFO)]。通常は、卵円孔開存を有していても特に問題ありません。しかし、状況によって血流が通常とは逆向き(右心房から左心房)に流れてしまう患者さんがおられ、なんらかのきっかけで生じた静脈内の血の塊(血栓)が卵円孔を通って右心房から左心房へ移動し、脳の血管に詰まること(脳梗塞)があります。こういった機序で生じる脳梗塞を奇異性脳塞栓症と呼びます。
経カテーテル的卵円孔閉鎖術(PFO閉鎖術)は、カテーテルを用いて2枚のディスクで形成された閉鎖栓を卵円孔に留置して、閉鎖する治療です。本治療の卵円孔を介した奇異性脳塞栓症の再発抑制に対する有効性が証明されており、本邦でも保険診療が開始されています。本治療は厳格な施設基準を満たした施設のみで施行可能であり、2021年より当院でも施行できるようになりました。また、新たにブレインハートチームを結成(脳神経内科と当科で)することで、本疾患の治療方針・その後のケアを慎重に行っています。
卵円孔開存に対するカテーテルを用いた閉鎖術は、以下の項目に該当する方が対象になります。
主に全身麻酔で、足のつけ根(鼠経)の静脈からカテーテルを挿入します。右心房から左心房へ、卵円孔を介してカテーテルを挿入し、閉鎖栓を留置します[右図]。留置後は、表面が徐々に内膜におおわれ、3か月ほどで被膜化されます。これによって、脳梗塞の再発リスクを低減させるとともに、抗凝固剤や抗血小板剤を終了することが考慮できるようになる治療です。
心臓の不整脈の代表疾患のひとつである心房細動を有する患者さんは、心臓内に血液のよどみにより血の塊(血栓)を生じ、脳梗塞に代表される全身の血管のつまり(塞栓症)を来たす可能性があります。これまでは予防法として、血をさらさらにする薬剤(抗凝固薬)を生涯内服することが推奨されていますが、一方で薬剤の影響による出血による薬剤の継続が困難であったり、同薬剤を内服していても脳梗塞を繰り返したりする患者さんがいます。
そういった患者さんに対して、抗凝固薬の代わりに血栓形成の約9割の原因と言われている「左心耳」の入り口を、カテーテルを用いて「ふた」をする治療が本治療になります。当院でも2021年6月から施設認定を取得し、治療を必要とする患者さんに治療をおこなっています。
上記の適応となるかどうか、かかりつけの先生に気軽にご相談ください。
“心不全”とは、どのような病気でしょうか?
日本循環器学会によると、「心不全とは、心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気です。」と定義されています。心不全は良くなったり悪くなったりを繰り返しながら、徐々に悪くなっていきます。
2016年の調査によると、わが国では年間130万人が死亡し、その7割を75歳以上が占めます。死亡原因は多い順に、がん(21%)、心疾患(15%)、肺炎(9%)、脳血管疾患(9%)であり、心疾患は非常に大きな割合を占めます。
わが国でも2018年から循環器疾患の緩和ケアが末期心不全を対象として始まりました。循環器疾患のなかでも心不全患者は、身体的、社会的、精神、心理的、スピリチュアルな苦痛といった全人的苦痛を抱えており、これらのあらゆる苦痛を予防し取り除くためには、早期からの多面的アプローチが必要です。当院では末期心不全患者に対して多職種介入により患者さん苦痛を取り除けるようチームとして活動しています。また身体的苦痛を取り除くために必要があれば麻薬や鎮静薬なども使用し苦痛を取り除くこともあります。
上記の図のように心不全はがんと違い改善可能な変化であるかどうかの判断が難しいため、現在、そして近い将来どのような治療、ケアを望んでいるのかを話し合いをしていく事が非常に重要です。
たかや ともふみ
高谷 具史
診療科長・心臓血管センター次長・臨床工学課長
【専門領域】
冠動脈インターベンション・循環器画像診断
【学会専門医・認定医・その他】
日本内科学会総合内科専門医・近畿支部評議員 日本循環器学会循環器専門医・近畿支部評議員 FJCS/Fellow of Japanese Circulation Society 日本心血管インターベンション学会心血管カテーテル治療専門医・代議員・施設代表医・ 近畿支部運営委員 日本心臓病学会社員(代議員) 神戸大学大学院医学研究科循環器高度医療探索学部門客員准教授 兵庫医科大学臨床教育教授 臨床研修指導医
かわい ひろや
川合 宏哉
副院長・心臓血管センター長・部長(内科統括担当)
【専門領域】
心エコー図学・心不全
【学会専門医・認定医・その他】
日本内科学会近畿支部評議員・認定総合内科専門医 日本循環器学会近畿支部評議員・認定循環器専門医・FJCS会員 日本心エコー図学会理事・認定心エコー図専門医 日本心臓病学会代議員・特別正会員・日本心臓弁膜症学会世話人 日本超音波医学会代議員・認定超音波専門医・認定超音波指導医 日本心不全学会代議員 日本核医学会評議員・日本心臓核医学会評議員 神戸大学大学院医学研究科循環器高度医療探索学部門客員教授
しまね あきら
嶋根 章
循環器内科部長
【専門領域】
不整脈
【学会専門医・認定医・その他】
日本内科学会認定総合内科専門医 日本循環器学会認定循環器専門医 日本不整脈心電学会認定不整脈専門医 植込み型除細動器・心不全に対するペーシング治療資格医 エキシマレーザーリードエクストラクショントレーニング修了 クックメディカルリードマネジメントトレーニングプログラム修了 MICRA植込み資格医
おおにし てつあり
大西 哲存
循環器内科部長・超音波センター長
【専門領域】
心エコー図学・SHD(Structural Heart Disease)/心不全
【学会専門医・認定医・その他】
日本内科学会認定総合内科専門医 日本循環器学会認定循環器専門医 日本超音波医学会認定超音波専門医・指導医 日本心エコー図学会認定心エコー図専門医・SHD(Structural Heart Disease) 心エコー図認証医 経皮的僧帽弁接合不全修復システム(MitraClip)Training Faculty 米国心エコー図専門医認定試験合格証取得(ASCeXAM) 日本心臓リハビリテーション学会心臓リハビリテーション指導士
よこい きみのぶ
横井 公宣
循環器内科部長
【専門領域】
不整脈・冠動脈インターベンション
【学会専門医・認定医・その他】
日本内科学会総合内科専門医・指導医 日本循環器学会循環器専門医 日本不整脈心電学会不整脈専門医 日本心血管インターベンション学会心血管カテーテル治療認定医 日本心臓リハビリテーション学会心臓リハビリテーション指導士 植込み型除細動器・心不全に対するペーシング治療資格医 臨床研修指導医
いのうえ ともひろ
井上 智裕
循環器内科部長
【専門領域】
冠動脈インターベンション・循環器画像診断
【学会専門医・認定医・その他】
日本内科学会認定内科医 日本内科学会総合内科専門医 日本循環器学会 循環器専門医
いとう みつあき
伊藤 光哲
循環器内科部長
【専門領域】
不整脈
【学会専門医・認定医・その他】
日本内科学会総合内科専門医 日本循環器学会循環器専門医 日本不整脈心電学会不整脈専門医 植込み型除細動器・心不全に対するペーシング治療資格医
きぬたに ひろと
絹谷 洋人
【専門領域】
冠動脈インターベンション・肺高血圧症
【学会専門医・認定医・その他】
日本内科学会認定内科医 日本内科学会総合内科専門医 日本循環器学会循環器専門医 日本心血管インターベンション学会心血管カテーテル治療認定医 臨床研修指導医
みやた たいし
宮田 大嗣
【専門領域】
冠動脈インターベンション・心不全末梢血管インターベンション
【学会専門医・認定医・その他】
日本内科学会総合内科医 日本内科学会総合内科専門医 日本循環器学会循環器専門医 日本心血管インターベンション学会心血管カテーテル治療専門医
たかはし のぶゆき
髙橋 伸幸
【専門領域】
SHD (Structural Heart Disease) ・冠動脈インターベンション
【学会専門医・認定医・その他】
日本内科学会認定内科医 日本循環器学会循環器専門医 日本経カテーテル心臓弁治療学会(JTVT) TAVR指導医 (SAPIEN/CoreValve) 経皮的僧帽弁接合不全修復システム(MitraClip)プロクター 左心耳閉鎖術(WATCHMAN)実施医 経皮的卵円孔開存(PFO)閉鎖術研修プログラム受講終了
やまもと ひろゆき
山本 裕之
【専門領域】
冠動脈インターベンション ・構造的心疾患インターベンション(SHD(Structural Heart Disease))
【学会専門医・認定医・その他】
日本内科学会認定内科医・指導医 日本内科学会総合内科専門医 日本循環器学会 循環器専門医 日本心血管インターベンション学会 心血管カテーテル治療認定医・専門医 臨床研修指導医 日本内科学会認定産業医 経皮的卵円孔(PFO)閉鎖術認定医・MitraClip実施医・Watchman実施医 難病指定医
くろせ じゅん
黒瀬 潤
【専門領域】
不整脈
【学会専門医・認定医・その他】
日本内科学会総合内科専門医・認定内科医 日本循環器学会認定循環器専門医・内科指導医 がん等の診療に携わる医師等に対する緩和ケア研修会修了
なかの しんすけ
中野 槙介
【専門領域】
冠動脈インターベンション・末梢血管インターベンション
【学会専門医・認定医・その他】
日本内科学会認定内科医 日本循環器学会循環器専門医 日本心血管インターベンション学会 心血管カテーテル治療認定医
やました けんたろう
山下 健太郎
【専門領域】
心エコー図学・SHD(Structural Heart Disease)/心不全
【学会専門医・認定医・その他】
日本内科学会認定内科医 日本循環器学会循環器専門医 日本超音波医学会超音波専門医 がん等の診療に携わる医師等に対する緩和ケア研修会修了
みわ けいすけ
三和 圭介
【専門領域】
肺高血圧症
【学会専門医・認定医・その他】
日本内科学会認定内科医 日本循環器学会循環器専門医
まつお こうき
松尾 晃樹
【専門領域】
冠動脈インターベンション・心不全
【学会専門医・認定医・その他】
日本内科学会認定内科医 日本循環器学会循環器専門医 日本心血管インターベンション学会 心血管カテーテル治療認定医
いちかわ やすし
市川 靖士
【学会専門医・認定医・その他】
日本内科学会認定内科医 日本循環器学会循環器専門医 がん等の診療に携わる医師等に対する緩和ケア研修会修了
ますもと あきこ
舛本 慧子
専攻医
【専門領域】
SHD (Structural Heart Disease) ・心臓超音波
【学会専門医・認定医・その他】
日本内科学会内科専門医 日本循環器学会循環器専門医 SHD(Structural Heart Disease)心エコー図認証医
つかもと しょうた
塚本 祥太
専攻医
【専門領域】
不整脈
さいとう たかゆき
齊藤 貴之
専攻医
【専門領域】
冠動脈インターベンション・末梢血管インターベンション
ふじもと ゆうな
藤本 優菜
【専門領域】
循環器内科
【学会専門医・認定医・その他】
がん等の診療に携わる医師等に対する緩和ケア研修会修了
うじろ さえ
宇城 沙恵
専攻医
【学会専門医・認定医・その他】
がん等の診療に携わる医師等に対する緩和ケア研修会修了
はやし ゆうき
林 友貴
専攻医
【専門領域】
循環器全般
【学会専門医・認定医・その他】
がん等の診療に携わる医師等に対する緩和ケア研修会修了
まえ のりかず
前 憲和
専攻医
【学会専門医・認定医・その他】
がん等の診療に携わる医師等に対する緩和ケア研修会修了
いわみ こうだい
石見 広大
専攻医
【専門領域】
循環器全般
やまもと あつき
山本 淳生
専攻医
さかい ゆうすけ
阪井 祐介
専攻医
【専門領域】
内科
【学会専門医・認定医・その他】
がん等の診療に携わる医師等に対する緩和ケア研修会修了
2016年 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
経食道心エコー図検査 | 420 | 618 | 610 | 606 | 635 | 680 | 712 | 789 |
運動負荷心電図 | 1,242 | 1,275 | 1,241 | 1,265 | 925 | 727 | 755 | 757 |
冠動脈CT | 906 | 787 | 836 | 846 | 799 | 749 | (487) | 701 |
負荷心筋血流シンチ | 1,596 | 1,762 | 1,951 | 1,943 | 1,777 | 1,796 | 1,669 | 1,537 |
冠動脈造影(CAG) | 1,120 | 1,466 | 1,182 | 1,184 | 1,319 | 1,197 | 1,192 | 1,079 |
2016年 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
経皮的冠動脈形成術(PCI) | 630 | 672 | 602 | 659 | 769 | 670 | 598 | 630 |
うち心筋梗塞 | 191 | 204 | 170 | 178 | 225 | 173 | 174 | 206 |
経皮的末梢動脈形成術(PPI) | 90 | 85 | 107 | 114 | 139 | 120 | 119 | 100 |
経カテーテル的大動脈弁留置術(TAVI) | 31 | 59 | 57 | 50 | 84 | 91 | 99 | 87 |
経皮的僧帽弁形成術(MitraClip) | - | - | 6 | 21 | 40 | 39 | 39 | 30 |
不整脈アブレーション | 288 | 358 | 361 | 368 | 368 | 408 | 427 | 538 |
うち心房細動 | 164 | 236 | 262 | 268 | 260 | 282 | 340 | 412 |
ペースメーカー | 212 | 157 | 180 | 142 | 181 | 197 | 217 | 190 |
植込型除細動器(ICD) | 44 | 33 | 33 | 33 | 25 | 22 | 28 | 36 |
CRT-P, CRT-D | 22 | 44 | 27 | 24 | 24 | 36 | 28 | 25 |
当科では、ともに地域を支えていただける若い先生方を募集しています。当科の売りは、下記のようにいくつもあります。一緒に頑張ってみませんか?最近のOBの先生方に在籍時に学んだことや、研修の感想について、コメントをいただきましたので、以下に紹介します。
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専攻医として、はりま姫路総合医療センターでの研修における大きな利点は多彩な症例の経験とそれを専門にされている先生方と研修させていただける環境でした。私の研修期間は6ヶ月と短い間ではありましたが、他の病院では経験できない様々な症例を担当しました。そして、どの分野でもその分野の最前線で活躍されている先生の考え方やその仕事ぶりを間近でみることができたことは貴重な経験であったと自覚しています。専攻医のうちに幅広い循環器疾患を経験しておきたい先生にとっては、とてもおすすめです。
姫循では非常に多くの循環器疾患の臨床経験と学会発表の経験を積むことが出来ました。各分野のエキスパートの先生がおられ、一流の治療を学ぶことができました。また、研修に来る専攻医は意識が高く、上を目指す意欲の高いメンバーであり、互いに刺激を受けながら切磋琢磨することが出来ました。
重症心不全患者の集中治療や、冠動脈疾患及び不整脈疾患のカテーテル治療などの幅広い臨床経験を積みながら、学会発表にも多く参加させて頂くことができ、循環器疾患の知識・技術を得ることが出来ました。
姫循、はり姫で合計4年間研修しました。はじめの1年はさまざまなグループをローテーションしながら研修を行い、その後は自分が興味を持った分野を中心に研修しました。急性期から慢性期、症状緩和が必要な患者さんまで様々な患者さんを診ることができ、上級医の先生方はどの先生も相談しやすく、グループの垣根を越えて患者さんにとってベストな治療が何かを相談しやすい環境でした。
その他にも、発表も盛んに行っており、学会や研究会で発表する機会が数多くあり、case reportを執筆する機会もいただきました。また、発表を伴わない学会参加やワークショップへの参加にも快く送り出していただき、院内だけではなく、院外でもたくさんの学びを得る機会をいただきました。
4年間の研修は、大変な時もありましたが、当初考えていたよりもたくさんの学びを得ることができ、自分自身の興味の幅を広げることができました。
内科専門医プログラムの最後の1年にはり姫での研修を選びました。選んだ理由は、症例数が豊富で、今までの施設では学べなかったSHDやECPELLA症例を経験できること、また学術活動(学会発表、論文執筆など)の指導体制が整っていること、そしてはり姫のレジデントには上を目指す意欲の高い若手医師が揃っており、良い刺激を受けながら研修することが可能と考えたからです。
実際の研修内容ですが、6年目には大学院に進学しカテーテル治療を専攻しようと考えていましたが、循環器内科を広く学ぶには最後のチャンスと思い、SHD、不整脈、虚血と数ヶ月ずつローテーションしました。また1年を通して重症患者の主治医としてCCU管理を学び、さらに学術活動についても丁寧な指導が受けられました。
1年間を振り返ってみると、確かにはり姫のような伝統と実績のある施設で周りの信頼を得て、何かしらの結果を残すというのは簡単ではなかったと思います。しかしながら、わずか1年間ではありましたが、私の臨床や学会発表・論文執筆の能力は確かにブラッシュアップされたと実感しています。
また、私は内科専門医プログラムの出向という立場でしたが、先生方はとても面倒見が良く、はり姫の一員として扱っていただき、非常に感謝しております。はり姫の1年間は、私のキャリアにとって重要な経験となりました。はり姫の循内は、意欲と向上心さえあれば、自分の能力を高めるための十分な教育が受けられる施設です。みなさん是非、はり姫で勉強してみて下さい。
姫循での研修は、本当に充実した日々でした。県内では圧倒的に多くのカテーテル症例があり、毎朝のカンファで全症例じっくり方針を相談した上でカテに入ることができました。さらにストラクチャー治療も多く、数多くの治療を経験しました。主治医は一人という制度でしたので、責任は大きかったですがやりがいも大きかったです。もちろん治療方針は一人で抱え込む訳ではなく、気軽に相談することができました。
OBになって感じているのは、姫循は医師、コメディカル含めて非常に臨床能力が高く、臨床的な経験やセンス、勘みたいなものを磨くのには最高の施設だと思います。それだけでなく、学術活動も盛んで、素敵な上級医が熱心に指導してくれます。私自身も複数の学会発表や論文作成が出来ましたし、何より周りの先生のおかげで臨床経験だけでなくリサーチマインドを得ました。
このような盛り沢山の経験ができる施設ですが、先生方は皆気さくで良い人ばかりで、若手医師も仲良く仕事をしています。また姫循での出会いというのはかけがえのないものであり、今も、これからの医師人生でも、宝物になると思っています。
自治医科大学を卒業し、義務年限内の県養成医として自由に研修できる2年間に以下のことを実現できる研修先を考えていました。
さまざまな病院での研修を悩みましたが、症例数の豊富な姫循に決めました。結果としてこの選択は大成功でした。
初めの1年は元々興味のあった虚血性心疾患に対するインターベンションだけではなく、今まで勉強することの少なかった不整脈グループもローテーションさせていただき、循環器診療全般の専門的知識を勉強できました。
2年目はカテーテル治療を中心に勉強させていただくという形で非常に柔軟な自分の希望に沿った研修をさせていただくことができました。緊急カテーテル治療の件数が多く、緊急治療は若手医師が中堅医師のサポート下に任されるため、2年で150症例程度、非常に多くの治療を経験することができました。そして、高度複雑病変の治療については、エキスパートの先生の治療を学ぶことができ、どの病院に行っても通用するようなカテーテル治療の考え方を学ぶことができます。
また、2年間を通して常にCCU、一般病棟含めた多数の患者さんを受持させていただき、重症心不全患者の管理やSHDの治療など、今まで自分が紹介していたような患者に対する治療をとてもたくさん経験することができ非常に自分の診療レベルを上げることができました。学会発表や論文作成など、ほとんど経験のなかった学術活動についても一から丁寧に諸先輩方からご指導を受けることができ、研究の進め方、解析の方法など細かく学ぶことができました。実際にコロナ以前でしたので海外の大きな学会での発表も経験でき、case report, original articleいずれも2年間で作成することができました。上司、同期、後輩ともに非常に尊敬できる方ばかりで切磋琢磨しながら、また困った時には何でも相談できる環境だと思います。また仕事以外でも仲良くしていただき、たくさんの繋がりを得ることができたことも姫路で働いたからこそだと感じています。
姫循を卒業した後、地域の中核病院に戻りましたが、循環器診療の底上げができたのではないかと感じており、今後の自分のことを考えながらたくさんの機会を与えていただいた姫循には本当に感謝しております。やる気があれば何でも可能にしてくれる病院だと思います。みなさんぜひ一度姫路で勉強してみてください。
当科では以前より独自の臨床研究、症例報告に加えて、神戸大学との共同研究や全国規模の臨床試験や治験に積極的に参加してきました。また、学会活動に加え、論文作成にも励んでいます。最近では専攻医の先生方に積極的にCase reportを書いていただいています。
論文発表年