命と機能を守る頭頸部がん治療(耳鼻咽喉科頭頸部外科)

がん治療も「はり姫」

命と機能を守る頭頸部がん治療(耳鼻咽喉科頭頸部外科)

「頭頸部(とうけいぶ)がん」という言葉を、皆さんはご存知でしょうか。口やのど、鼻、耳、そして甲状腺など、首から上の部分(脳と目を除く)にできるがんの総称です。すべてのがんの中で約5%程度という比較的まれな病気ですが、この領域には「呼吸をする」「食べる(飲み込む)」「言葉を話す」「においや味を感じる」といった、人が生きるうえで欠かせない機能が集まっています。

「はり姫」の耳鼻咽喉科頭頸部外科では、がんをしっかりと治す「根治(こんち)」と、これまでの自分らしい生活を保つための「機能の温存」の両立をめざして、チームで治療にあたっています。

数字で見る、はり姫の頭頸部がん診療

頭頸部がんの新しい患者さんは、開院翌年の2023年は102例でしたが、その後も増え続け、2025年度は200例を超えました。2025年(1月~12月)には、手術91件、放射線治療・化学療法71件、あわせて162件の頭頸部がん治療を行っています。

部位 手術 放射線治療・化学療法 計
口腔がん 16件 0件 16件
咽頭がん 20件 37件 57件
喉頭がん 12件 10件 22件
鼻・副鼻腔がん 6件 6件 12件
甲状腺がん 25件 2件 27件
唾液腺がん 7件 1件 8件
その他 5件 15件 20件
合計 91件 71件 162件

※2025年1月~12月の実績(当院年報より)

また当院は、日本頭頸部外科学会の頭頸部がん専門医制度の準認定施設(2023年1月)、日本内分泌外科学会の専門医制度の認定施設(2024年4月)に認定されています。

遠方へ通わなくても受けられる治療を

頭頸部がんの手術では、がんを切除した後に、失われた形や機能を体の別の組織を使って作り直す「再建手術」が必要になることが多くあります。当院では、形成外科や脳神経外科と協力し、再建を伴う手術や、頭蓋底(頭の骨の底の部分)に広がった腫瘍の手術にも取り組んでいます。播磨姫路地域にお住まいの方が、遠方の病院へ通うことなく治療を受けられるよう努めています。

「切らずに治す」「機能を残す」ためのアプローチ

患者さんの体への負担をできる限り軽くし、生活の質(QOL)を守るための治療法を取り入れています。

口からアプローチする手術「TOVS(経口的ビデオ喉頭鏡下手術)」「ELPS(内視鏡的咽喉頭手術)」
早期の咽頭がんや喉頭がんなどに対して、首の皮膚を切開せず、口の中から器具を入れてがんを切除します。ELPSは消化器内科の内視鏡医と協力して行っています。体の表面に傷が残らず、声を出す・飲み込むといった機能を守ることができます。低侵襲な手術により、治療後の社会復帰がスムーズになります。

口から器具を入れてがんを切除するTOVS(経口的ビデオ喉頭鏡下手術)とELPS(内視鏡的咽喉頭手術)のイメージ図

がんにねらいを絞って薬を届ける「RADPLAT(ラドプラット)」
2025年7月から、進行した上顎洞(じょうがくどう:鼻の奥の空洞)がんなどに対して、「RADPLAT(超選択的動注化学療法併用放射線療法)」を行っています。がんに栄養を送っている細い血管までカテーテル(細い管)を進め、抗がん剤を直接流し込みながら放射線を当てる治療です。病状によっては、顔やあごの骨を大きく切除せずに治療できる場合があります。放射線診断・IVR科、放射線治療科と協力して行っています。

体への負担に配慮した薬物療法と放射線治療
周りの正常な組織への影響を抑える強度変調放射線治療(IMRT)や、患者さんの体の状態に合わせて選ぶ薬物療法を組み合わせています。光免疫療法やBNCT(ホウ素中性子捕捉療法)など当院で行っていない治療が適している場合は、実施している医療機関へご紹介します。

医師だけではない。専門職が集まる「頭頸部腫瘍センター」

頭頸部腫瘍センターのカンファレンスの様子

どんなに優れた医師でも、一人で治療とケアのすべてを行うことはできません。当院では「頭頸部腫瘍センター」を設け、複数の診療科と専門職が週1回のカンファレンスで一人ひとりの治療方針を話し合っています。

  • 耳鼻咽喉科頭頸部外科医師:診断と手術を担当し、治療全体の方針をまとめます。
  • 放射線治療科・腫瘍・血液内科医師:放射線治療や薬物療法を組み合わせ、効果と体への負担のバランスを考えた治療計画を立てます。
  • 歯科口腔外科医師:治療の前から口の中の環境を整え、治療中の合併症(感染症など)を防ぎます。
  • 言語聴覚士(ST):治療後も食事や会話ができるよう、飲み込みや発声のリハビリテーションを担当します。
  • 専門看護師・認定看護師:がん看護や放射線療法の専門知識を持つ看護師が、治療への不安や副作用のつらさに寄り添います。

「これまで通りの声で家族と話したい」「自分の口でおいしいものを食べ続けたい」。そんな当たり前の願いと「その人らしい暮らし」を守るために、頭頸部腫瘍センターは持てる知識と技術を結集して治療に臨んでいます。

大月 直樹 医師

この記事を解説した医師

大月 直樹 医師耳鼻咽喉科頭頸部外科 診療科長/頭頸部腫瘍センター長

日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会専門医・指導医/日本頭頸部外科学会頭頸部がん専門医・指導医/日本内分泌外科学会専門医・指導医/日本気管食道科学会専門医

「声や食など、QOL(生活の質)を保つ治療をめざします」

頭頸部がんは、話す・食べる・飲み込むといった、毎日の暮らしに直結する場所にできるがんです。治療にあたっては、がんを治すことと同じくらい、治療の後も声や食をできるだけ守ることを大切にしています。のどの違和感や首のしこりが続くときは、早めにかかりつけ医にご相談ください。手術後のリハビリテーションまで含めて、播磨姫路地域で治療を完結できるよう、チームで取り組んでいます。

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