
「緩和ケア」と聞くと、皆さんはどのようなイメージを思い浮かべるでしょうか。「治療の手立てがなくなってから、最後に受けるもの」「末期がんの患者さんが行くところ」。もしそんなイメージをお持ちだとしたら、それはもう“ひと昔前の話”です。

以前は、がんを「治す」ための治療をやり尽くし、いよいよ手立てがなくなった段階で「緩和ケア」に切り替える、という形が一般的でした。しかし今は違います。がんと診断されたその時から、「治す」ための治療と「つらさを和らげる」緩和ケアを並行して行うのが、現在の標準的な医療の考え方です。
がんの治療中は、病気そのものによる痛みや息苦しさだけでなく、抗がん剤などの副作用による吐き気、そして「これからどうなるのだろう」という不安や気分の落ち込みなど、体と心にさまざまな「つらさ」が生じます。緩和ケアは、こうしたつらさを和らげ、治療を続けやすくするためのケアでもあります。
当院の緩和ケアセンターは、次の4つの部門が一体となって、診断の時から退院後の在宅療養まで切れ目なく患者さんとご家族を支えています。
「痛みを我慢してまで、無理に治療を続けたくない」「点滴の副作用がしんどいから、お薬を調整してほしい」「治すための治療も頑張りたいから、並行して痛みをなんとかしてほしい」。患者さんやご家族の「どうなりたいか、どうありたいか」という思いは、人それぞれです。
私たちはその声にしっかりと耳を傾け、主治医と連携しながら症状を和らげるお薬の調整などを行い、体調を整えていきます。緩和ケアは決して「治療の切り替え先」や「あきらめるための場所」ではありません。患者さんの思いに向かって「今できること」を一緒に見つけ出す、伴走者でありたいと考えています。
一般に、緩和ケア病棟の対象は、がんやエイズの患者さんに限られることがほとんどです。はり姫の緩和ケア病棟では、心不全、呼吸不全、腎不全、肝不全などの臓器の病気や神経難病、重いけがの後の状態など、がん以外の病気でつらさを抱える患者さんも受け入れています。救急病棟や集中治療室からも、必要に応じて受け入れを行っています。
がんの患者さんに限らず、さまざまな病気やけがで「つらさ」を抱えている方に、広く対応できる体制と環境が、はり姫には整っています。「いよいよ」の局面を迎えるずっと前から、主治医の先生と一緒に、ぜひ気軽に「緩和ケア」という選択肢をご相談ください。

この記事を解説した医師
坂下 明大 医師緩和ケア内科 診療科長/緩和ケアセンター長
日本緩和医療学会緩和医療専門医・指導医/日本内科学会認定内科医・総合内科専門医/日本呼吸器学会呼吸器専門医・指導医
「がんと診断された初期段階から、自分らしく生きるためのケアを」
緩和ケアは終末期だけのものではありません。「はり姫」では、がんと診断された時から体や心のつらさを和らげるケアを治療と並行して行います。医師、看護師、薬剤師、リハビリテーションスタッフ、相談員がワンチームとなり、患者さんとご家族が自分らしい生活を続けられるよう、全力で支えます。